40歳独身貴族のアバンチュール26(0111)
高尾山は標高599メートルの山なので、山頂まで2時間もあれば到着する。
程無くして山頂に到着すると、数軒お茶屋さんがあったのでそこでご飯を食べる事にした。
二人は数あるメニューの中から注文したのは名物のとろろそばであった。
数分待った後、とろろそばが運ばれてきた。
何故こういった場所にあるご飯屋さんは町中の同じ商品よりおいしく見えるのだろうか。
二人はここでもビールを飲みながら蕎麦を食した。
(幸せだ)
心の中でそう思っていた。
あやの方をちらりと見ると、彼女も笑顔で蕎麦を食べながらビールを飲んでいた。
コロナで外出自粛を余儀なくされ窮屈な生活をしていた反動もあり、
久し振りに自然に触れていつも以上にリフレッシュ出来ている。
また、一緒にいるのが気心の知れたあやである事も大きい。
全く気を使わないのでのびのびと出来ている。
しばらく山頂でまったりとする二人。
なんの話をしたかは覚えていない。
それくらい、自然と話をしていたのだ。
内容は覚えていないが、楽しかった事だけは分かる。
自然体でいるという事はこういう事なのだろう。
その後下山して、あやを家まで送る為に車を走らせる。
楽しそうにしていたあやだが、
彼女の家が近づくにつれて表情が曇ってきたように感じた。
普通の人であれば気付かないような些細な違いなのだろう。
しかし昔からあやの事を知っている健二にはそれを感じ取れた。
「どうした?なんかあった?」
あやに問いかける健二。
しかしあやは通常通りを装っていたのか、
「別になんともないよ。どうして?」
と聞いてきた。
「いや、気のせいだったらいいなだけど、あやの表情がなんか曇った気がしたからさ」
そう言うと、あやが「えっ?」と驚いた表情を見せた。
「そんなに顔に出てた?」
「いや、多分普通の人だとなんとも思わないよ。
ただ、付き合いが長いから気になっちゃっただけなんだよね」
「マジかあ」
あやが笑いながら言った。
「マジかあ、けんじにぃにはかなわないなあ」
そう言いながら、若干困った表情を見せた。
「どうしたよ?なんかあった?」
もう一度聞いてみた。
あやは困った表情のまま、もじもじとしだした。
そして一言。
「なんかね。このまま帰るの寂しいなって思っちゃったんだよね」
あやはポツリと言った。
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