【東京上京物語①】20230222
心地よい風が吹いている。
北海道の冬は本当に冷え込みが激しく、当然しっかりと防寒具を着込んでいる。
4月になっても北海道の気温は10℃くらいなので、皆長袖を当然のように着用していた。
しかし、力也は違った。
今まで生まれてから18年間北海道に住んでいた彼だが、今年晴れて東京の大学に合格し、単身東京都の江戸川区に引っ越してきた。
ここで、彼の新しい生活が始まるのだ。
気温がそもそも北海道より関東の方が暖かい事もあるが、それ以上にこれから始まる新生活への期待の大きさから、今吹いている何気ない風ですら心地良く感じさせていたのだ。
時は若干遡り、ここは千歳空港。
「力也、一人で本当に大丈夫かい?」
旅立つ直前の力也に母が心配そうに問いかけた。
母親の立場からしたら、初めて親元を離れて暮らすわけだ。
心配なのは当然である。
「大丈夫だよ。せっかく東京の大学に行かせてもらえるんだから、向こうでもしっかりと勉強して成長してくるよ!
なにかあったら電話とかも出来るんだし、心配しないでよ!」
心配をかけまいと笑顔で答える力也だったが、
「でも、、、」
とやはり母は心配そうだった。
すかさず、力也の父親が
「もう力也も18歳なんだし、立派な成人だ!
男は、色々な経験をして大きくなっていくからお前もしっかりと色々経験して大きくなれ!
母さんと父さんの心配はしなくていいから、しっかりやってこい!母さんもそんなに心配そうにしてると、力也の門出にケチがつくぞ!」
と力強く言ってくれた。
力也は不覚にも目頭に熱いものを感じた。
しかしそれを表に見せずに、
「大丈夫!行ってくるよ」と言って空港のゲートをくぐって行った。
彼が18歳の春の物語である。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。