【東京上京物語⑥】20230309
出てきたのは、女性だった。
力也は一瞬、言葉を失った。
その女性は身長が小柄で可愛らしい雰囲気の子であった。
髪は鎖骨くらいまである綺麗な黒髪で、清楚という言葉がぴったりとあてはまるような子であった。
今までずっと北海道で生活していた力也だったが、こんなに綺麗な子を見るのは初めてであった。
むろんテレビでは綺麗な芸能人を何人も見てはいるが、彼の中ではそのテレビの中の子達と遜色違わぬ魅力を感じたのであった。
「あ゛、あ゛の!」
緊張のあまり、つい話しかける声がどもってしまった。
恥ずかしさでいっぱいになったが、バレないように下を向き、軽く深呼吸をした呼吸を整える。
「あ、あの!」
よし、今度はいけそうだ。
「今日から隣に引っ越してきた、力也と言います。一人暮らしが初めてでもしかしたらご迷惑をおかけしてしまうかもしれません。もしうるさかったりしたらいつでも言ってください。
あ!これ、お引越しのご挨拶の際の手土産です。もし良かったら食べてください」
そう言って、先程購入した船橋屋のくず餅を差し出した。
よし、今回は噛まずに言えた。
力也はホッとした。
しかし、女の子の方を見ると、少し困ったような表情をしていた。
(なにか、まずかっただろうか。。)
内心、力也は心配になってしまった。
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