girikenのブログ

40歳の未婚おじさんが描く恋愛小説

【東京上京物語⑨】20230315

上京して数日後。

力也は北海道の友達で今回上京してきた上京組4人で会う事になった。

待ち合わせ場所は渋谷だ。

地名は聞いた事はあるが、当然行ったことは当然無い。

まあしかし、ただ単に多少大きめの若者が集まる場所なのだろう。

その程度にしか思っていなかった。


田舎出身者にはややこしく感じる電車を乗り継ぎ、渋谷の地へと降り立った。


(なんだ、これ)


カルチャーショックを受けた。

よく駅前のスクランブル交差点を見て、祭りが開催されてるのかと思ったと言う人がいることは知っていた。


「そんな、アホな」


力也もそう思っていた。

あの光景を見るまでは。

スクランブル交差点の歩行者用信号が青になった瞬間、無数の人達が一斉に渡りはじめる。

交差点の中央付近はまるでぎゅうぎゅうのおしくらまんじゅうみたいな状態に思えた。


力也にとっては全てがカルチャーショックだった。


今まで生きてきた自分の常識が通用しない。

若干戸惑いながらも、流れに身を任せ約束していたお店に到着した。

するとそこには、昔から知っている3人の姿があった。

こんな今までは考えられなかった異空間に身を置いているが、やはり昔から知っている仲間に会えると心が安堵している事にすぐ気付くことが出来た。


当然4人とも一人暮らしで、この上京してから数日の話で会話に花が咲いた。

そんな折、隣人の話になった。


「いやあ、隣の人が東南アジア系の人で、独特の匂いがするんだよね」

「俺の横なんておじいちゃんで、ちょっと電話で話すだけで壁を叩かれる」


そんなネガティブな話ばかりだったので、力也は自分の隣人の話は伏せた。

もし話したら、見せろと言って押しかけてくることも懸念しての行動だった。


(あぁ、俺ってラッキーだったんだな)


力也は1人でにやけそうになる顔を抑えるのに一生懸命だった。