girikenのブログ

40歳の未婚おじさんが描く恋愛小説

40歳独身貴族のアバンチュール①

また今年も独身のまま一人で明石家サンタを見るのか」
ため息と共にこなれた手つきでカップラーメンにお湯を注いで令和初のクリスマスを迎えた男がいた。
彼の名前は高橋 健二。
この話の主人公である。
傍らには彼の飼っている猫の「じゃじゃ丸」がいる。
猫を飼い始めたのは彼の思い付きからであったが1匹目は彼のだらしなさが災いして餓死してしまい、じゃじゃ丸は2代目となっている。


自分はまだ若いと思いつつ気付けば彼も40歳。
実家を離れて15年。
70歳の母親からは会う度に「いい人はいないのか?」「早く孫の顔が見たい」と小言のように言われる始末。
彼は三人兄弟の長男なのだが、他の兄弟は誰一人結婚してない。
その為、長男である彼に母親からかかるプレッシャーは別格であった。


彼自身は無類の子供好きであり、若くして結婚をして子供が欲しいと思うタイプの人間である。
しかし無類の女好きでもあり、女性関係も猫の扱いと同様にだらしなかった。
付き合っている彼女がいる際も並行して数々の女性に手を出してはそれがバレて愛想を尽かされ振られてきた始末である。
「世の中には星の数ほど女がいる。また次の女を探せばいい」
そんな短絡的な考えを繰り返してきた結果、令和初のクリスマスをカップラーメンを食べながら猫と共に過ごす40歳独身貴族が出来上がった。


とはいうものの、40歳になるとなかなか出会い自体が減ってしまうものである。
学生時代の仲間も各々結婚して新しい家庭を作り上げている。
どこかその辺に出会いは落ちていないだろうか?道端に落ちているハンカチーフがきっかけで運命の人と出会ったりしないだろうか?
そんな事を考えながら道端を見回してもそんな出会いは落ちているはずがない。
男はかなり焦っていた。