girikenのブログ

40歳の未婚おじさんが描く恋愛小説

【東京上京物語⑤】20230308

自宅のあるアパートに戻ると、ちょうどお隣さんの引っ越しの作業も終わっているようであった。


「ちょうどいいな」


力也は帰り際、お隣さんのインターホンを鳴らした。

しばらく待ってみたが、応答が無い。

もう一度鳴らしてみる。

やはり、応答が無い。


「引っ越しが終わって、買い物とかに出かけたのかな」


そう思い、一旦自分の部屋に入った。

手土産はまた戻ってきたタイミングで渡そう。

そう思いながら、自分の家のベッドに腰掛けた。


改めて周囲を見渡す。

今日からここで、一人暮らしが始まるのだ。

そう思うと、また意識せずにニヤついてしまった。

はたから見たらただの変人に写ってしまうかもしれない。

しかしながら、このワクワクを抑えつける事ができなかった。


小一時間が経過して、状況が変化した。

バタバタ!という音と共に、隣の部屋から物音が聞こえるようになった。


「あぁ、こんなに隣の音が響くのか」


ふとそう思ったが、丁度帰ってきたみたいなのでさっきの手土産を持ち、お隣に挨拶をしに行こうとインターホンを鳴らす。


「はーーーい」


部屋の奥から声が聞こえる。

どうやら、女性のようだ。


ガチャ


扉を開ける音と共に、住人の女性が現れた。

【東京上京物語⑧】20230303分

「あ!私、エミって言います。タカハシ エミです!今回大学に通うために、お引っ越ししてきました」


エミちゃん。

いい名前だ。


しかし挨拶の後も小話をちょっとしたが、どうも彼女がよそよそしい。


(あれ、迷惑だったかな)


場の雰囲気を察して、力也は切り上げる事にした。


「何か困ったことがあったら、いつでも声をかけてくれていいんで!」


そう言うお彼女はニコッと微笑み、


「ありがとうございます。これから宜しくお願いします」


と言って部屋の中は消えていった。

微笑んだ顔も可愛かった。


こうして力也の上京1日目は終了した。

それにしても、なんという事だろうか。

元々今回住む物件はお世辞にも綺麗でお洒落な物件とは言えない。

むしろ、真逆の立ち位置にある物件だ。

だから、お隣も外人の人か年配の方 人だろうと勝手に想像していた。

しかし、現実は自分の好みど真ん中の女の子が同じ日に引っ越してきたのだ。

これからの新生活を考えると、ワクワクが止まらないのであった。

【東京上京物語④】20230302

さて、手土産はなにが良いのだろう?

コンビニで売っているクッキーとかでは味気ない。

せっかくなら、喜んでもらえる方が嬉しい。

なにより手土産一つで関係値を作れたら、今後友達を家に招き入れて多少うるさくしても大目に見てもらえるだろうという邪な考えも若干あった。


早速、Google先生に聞いてみる。

(平井 おススメ お菓子)

このワードで検索してみた。

すると、平井から一駅隣の亀戸に気になるお店が出てきた。


船橋屋 「元祖 くず餅」


亀戸は江戸の風情が色濃く残る街で、学問の神様・菅原道真公が祀られている「亀戸天神社」や、スポーツ振興の神で知られる「亀戸香取神社」など、合格や勝利祈願で訪れる人も多く、駅前の商店街からの街歩きも楽しめる人気の街らしい。お土産に人気のお菓子や名物菓子など、バラエティ豊かなお土産が揃っているのだが、そんな亀戸の中でも1番のオススメらしい。

しかも、本店が亀戸天神前にある。


ミーハーな彼は、人気や1番のオススメという言葉に弱い。


「これは間違いないだろう!」


早速お店に向かった。

お店に着くやいなや、店員さんが試食を勧めてくれた。

パクリと一口食べてみる。

やはり直感通り絶品だ。

迷う事もなく、即座に購入した。


ビニール袋に入れてもらい、帰路につく。

ついつい気持ちが昂った反動でビニール袋ごとブンブン振り回しそうになった。


「危ない、危ない」


新鮮な事が多々あって上京1日目。

彼は満面の笑みをしていた。

後は、この手土産をお隣さんに渡してこの素晴らしい初日を終える事が出来る。

彼にとって今日一日を採点するならば120点。

人生の中でもトップクラスで楽しい1日であった。